新かな配列練習道場

~単打最多の最凶かな配列を10本指で調教しよう~

配列に効率を求める難しさ

よくある配列選択の動機として「速く打てるようになりたい!」というのがありますよね。

ただ、じゃあ実際速く打てる人はどうなのかと思って検索すると、qwertyやJISかなを使ってる人の動画ばかりが出てくるわけですよ。

タイピングゲームのランキング上位もqwertyやJISかなを使ってる人ばかりですよね。

 

事実として、新配列はタイピストが築いてきたデファクト遵守の籠城を崩せていない。

 

一矢報いているのは月配列だけです。第一線のタイピスト (いわゆるZタイパー) の方が複数名いらっしゃいます (10人はいなさそう)。特に有名タイピングソフト「タイプウェル」を用いた打鍵評価がその証拠となっております。

とはいえ、月配列タイピストqwertyに対する優位性は示せているものの、JISかな勢には遠く及びません (初見文では強そうですけどね)。タイプウェルのような準固定文のお題では総打鍵数が少ない配列ほうが有利というのはありますが、一世紀単位の歴史があるqwerty、JISかなと比べて、近代的な配列は高速タイピングにおいて所詮その程度であるということです。

別な言い方をすると、人間は高速タイピングの理論を築けていないのです。高速タイピストも自分が何故速いのかをちゃんとは理解していないでしょう。「自分はこうやって練習したから速くなれた」という経験談はあるのでしょうが、何故その練習が有効だったのか、万人が自分のレベルに達するにはどうすればよいのかを客観的に示せる人はいないでしょう。

 

 じゃあやっぱり、標準の配列を極めるのがよいのか?という疑問に対しては以下の3つ問を投げ返します。

 

・あなたはどのくらい速くなりたいのですか?

動画サイトで高速タイピストを参考にするのはランニング初心者がボルトの走りを見るようなものです。目標とする速さを数字で決めましょう。字/分でイメージつきにくかったらe-typing等のタイピングゲームのスコアでも良いと思います。

 

・一日数時間もタイピング練習をしてまで、速くなりたいですか?

高速タイピストは常人には想像つかないくらいタイピング練習をしています。一日10万打鍵は当然、凄い人は20万打鍵以上も打ちます。果たしてそれが、あなたが求めてる効率化に対して理にかなっていると言えるのでしょうか?練習が必要ということ自体が非効率的です。あまり練習しなくても、平均よりやや速く打てるようなお手軽な配列、そういうものをあなたは求めているんじゃないでしょうか?

 

・速さよりも「楽さ」が大事なのではないですか?

なにをもって効率化というのでしょう。たしかに、例えば「足の速さ」を考えたらマラソンランナーやアスリートの姿が目に浮かびますが、「効率的に歩く方法」なら話が変わります。なにも速歩きをする事だけじゃないはずです。まず靴を考えますかね。軽くて底が硬すぎないものがよいでしょう。また、歩き方の改善も考えるかもしれません。ただし、「歩く練習」なんてしようと思いますか?常人にとって歩くことは、練習が必要なほど特別な行為なのでしょうか?というように、文字入力でも「指を速く動かすこと」と「効率的に入力作業を行うこと」は分けて考えなくてはいけません。

 

いずれにしてもデファクト使いがトップタイピストとして君臨する以上、配列に効率を求めるのは注意が必要です。おそらく残念ながら、初学者では上記の3つの問を突きつけられるステージまで思考が及ばないでしょう。デファクトでも十分速い人が1人でもいるとわかれば、配列を変える気も失せてしまうのではないでしょうか。逆にいえば、それでも配列を変えるとするなら自分の才能・能力ではqwertyを使えないという見切りをつけることになり、そういう決断は特に若い人には難しいかもしれません。

というように、どうやってデファクトを駆逐するかとか、新配列のあるべき受け入れられ方などを考えるのもまた一つの沼であり、なかなか一筋縄ではいかず、思考を巡らしても「開発者もユーザーもじっくり考えたうえでそれぞれの個性を活かしたらいいんだよ」、というようなふわっとした結論しかでません。。まぁそれでいいのかもしれませんね。