新かな配列練習道場

~単打最多の最凶かな配列を10本指で調教しよう~

配列開発の妥協点・いろは坂配列に修正は必要か?

万人にとっての完璧な配列など存在しませんが、それどころか自分が納得できる配列ですら作るのは容易ではありません。

なぜなら自分の環境・技術・知識、そしてそれらから導かれる理想が時々刻々とブレていくからです。

 

環境の変化は想像しやすいですね。例えば学生から社会人になったら会社の報告書やメールが打ちやすい配列がよいでしょう。上司の名前も打ちやすいほうがいいかもしれませんね。作家になるなら小説調ですし、技術者になるなら専門用語ばかり打ちます。他方で趣味を重視するならネット世界で謳歌する為にスラングやゲーム用語が打ちやすいほうが良いでしょう。ブログを始めるなら平易な日本語をすらすらと書けたほうがいいですね。

 

技術の変化ですが、まず配列を検討していく中でキーボードに触る時間が増え、指が器用になり基礎的にタイピングが上手くなります。また配列を変えたあとに指がその配列に適応する事で進化します (例えばいろは坂配列ではホムポからして特殊なので、慣れる前後で感覚が全く違う)。一方で、人は年をとるにつれ指は動かなくなり、腱鞘炎にも弱くなるといったマイナスの変化もありますので、ある配列を自分が若いうちは扱えても将来使えなくなる可能性もありますね (QWERTYとか)。

 

知識の変化も言葉の通りです。たとえばQWERTYだけしか知らない人は他の配列を触るまでQWERTYの欠陥に気づきません。いろいろな配列を勉強するといろいろとアイデアが湧いてくるので、それを自分の配列に活かせないか?などと考えたりします。例えばいろは坂配列の後置シフトは月見草配列を参考にしてますし前置シフトは親指シフトを参考にしてます。コンセプトもブレていくでしょう。例えば計算で機械的に導かれた配列こそ自分の理想と思っていたところで、薙刀式のような日本語の構造を大事にしたり手書きの感覚を重んじる概念を学ぶと、最適化条件そのものを考え直さなくてはなりません。

 

つまり、将来の自分にとっての理想は現時点からは近似的にしか分からないということです。いま、どんなに頑張って配列を作ったとしてもそれは理想の第一近似でしかありません。しかもタチが悪いことに今使ってる配列の欠点は年単位で使っていかないと分からないものです。

じゃあどうすればいいかというと、配列開発と作り直しを年単位のスパンで無限に繰り返せば良いわけですよね。。とりあえず目の前の山を登らねば次の山は見えないということです。ただし人生は有限なので何十回もそんな事やってられません。

 

配列開発者の皆様が実際にどうしていらっしゃるかというと、有名な方々は年単位の検証繰り返し回数n=2~3で落ち着いている印象です。存じ上げている中で紹介させていただくとn=2のケースは

・下駄配列→新下駄配列 (kouy様, けいならべが下駄と新下駄の間に入るかも・・?)

・小梅配列→ 蜂蜜小梅配列 (降鷹様)

・月配列T→月光 (tken様)

n=3のケースでは

・こまどり配列→よだか配列→かわせみ配列 (semialt様)

・カタナ式→薙刀式決定版→究極版 (大岡様)

がパッと思いつきました。記載漏れがありましたら教えていただけると幸いです。 

 

配列固定期間が年単位なだけではなく設計期間も年単位な事もあるので、まさにライフワークといったところです。

 

 

 

 

さて、以下は私の話ですがいろは坂はまだn=1ですね。。ただ例えば飛鳥配列もn=1でしょうし、無理にn=2にしなくても良いとは思うのですが、私自身、いろは坂をやる前と比べて既に相当理想がブレてきています。

 

ここで配列設計時には想定していなかったいろは坂の欠点をまとめましょう。

 

①交互打鍵率を下げすぎた (52~53%)。交互打鍵は10打/秒くらいの速度以上でネックになるからローマ字配列では嫌われるが、カナ配列、しかもいろは坂のような単打率高い配列ではそこまで気にするべきではなかった。同手打鍵が多く高度な指の訓練が必須。

②中指・薬指の中間に位置するどちらでも打っていいキー (の・を・く・も) が打ちにくい。運指最適化には慣れていたつもりだったが、本当にどっちでも良いと言われるといちいち迷う。特に「の」のような高頻出文字を持ってくるべきではなかった。

③小指の段越えが意外と多い。もともといろは坂では全指をほぼ均等の頻度にしようとして設計してましたが、さすがに小指の頻度が高くなりすぎました。また両小指が2列ずつの担当なのでなおのこと短い小指では大変です。いろは坂では段越えのペナルティを大きく見積もっていましたが、小指をその他の指を間では特に差を設けていませんでした。小指の段越えは特にやりにくいので気を付けて抑えるべきでした。

④最も遠い左上「や」と右上「ひ」の頻度が微妙に高い。最も遠いんだからもっと頻度低くするべきでした。

⑤TABキーが「よ」単打で、本来のTAB機能がシフト面に追いやられていること。例えば「ー」にすればこれは文の一字目には来ないから入力中のみ「ー」にし、その他でTABを出力するようにすればよかったです。

⑥人差し指が意外と暇。私は人差し指にあまり神経が通ってないので (比喩) 設計時はそこまで重視してなかったのですが、小指が忙しいのに人差し指が楽しているのはやはりおかしいですね。特に「ー」のような低頻出文字がQWERTYの「T」に相当する位置であり、もったいないです。一指に高頻度文字を担当させすぎると同指打鍵が増えてしまい微妙なんですが、それでももう少しやりようはあったなと思います。

⑦「っ」+「パ行」が打ちにくい。ちょっぴり、はっぴー、やっぱりとか、これ意外と出くわすのに親指連打しないと出せないんですよね。親指は強い指ですが連打にはあまり向きません。月見草式前置シフトに半濁音を持ってきた宿命ではありますが、なんとかならないものか。。

⑧中指・薬指の性能を過信しすぎた。最上段はそれぞれ各指2キーずつ担当ですが、特に横方向の空間把握が超難しい。「がり (13)」「られ (24)」を左中指→薬指で打つ時、ブラインドタッチできますか?この連接自体は全く同じ運指なので、中指・薬指のキーボード上の絶対座標を把握しないと無理です。また「がれ(14)」「らり(23)」もややこしい連接でこれまた両方、左中指→薬指なので「指の開き加減」で把握しなければいけないんですよね。どうも人間には中指・薬指が今どれだけ開いているかのセンサー備わっていないように思えて (人差し指・中指ならなんとなく分かる?)、慣れるのにかなり苦戦しています。

 

こんなところでしょうか。それでは、いろは坂配列も作り直さなくてはいけないのでしょうか?

これだけ欠点を挙げておきながら結論から言うと否。理由は以下のとおり (あ、上の番号との対応はないです)。

 

①カナ入力、特に4段配列はどんなに頑張っても不快な連接は消えない。

②作り直したところで所詮はいろは坂配列、ユーザーが増えるのは想像できない。万人向けの配列を目指しているわけではない。

いろは坂配列の第一目標としてタイプウェル常用で28.8秒 (自分のJISかな記録)。ちなみに今29.1秒です。Zの領域に来たらもう後戻りできないです。。

④練習によってなんとかなる筈。いろは坂配列キーボードは私にとって楽器。これでもピアノやギターよりも簡単でしょう。

 

どんな配列にも欠点はありますし、上記のようないろは坂の欠点をもってしても私にとってはこれ以上自分に合った配列は見当たりません。多分。

 

とにかくあまりにも、あまりにも練習し直しのコストが高すぎる。。笑 (一年間かけて今のところまで来たのに。。)

それにタイピング理論は正直、特に高速域では未だにブラックボックスに包まれていると考えています。今ある自分の理論に従ってせっかく作り直したところで、今よりかえって速く打てなくなるリスクですらあるのです。

一方で、今のいろは坂配列は練習を裏切らない事はわかってます。空間把握は大変かもしれませんがとにかく打鍵数が少ないので、高度に指に力がかかったりしないです。指や手首を痙攣させないと速く打てないQWERTY配列とは対照的です。

 

なので配列界・タイパー界の片隅でこれからもぼちぼちやることにします。

 

 

ただ、やはりn数が1と2では配列の印象は全然違いますね。n=2を経験してる配列のほうがそのコンセプト・開発者の趣向の中ではたしかに洗練されています。結局のところ年単位で習得したものを何回やり直せるかという体力勝負なのかもしれません。