新かな配列練習道場

~単打最多の最凶かな配列を10本指で調教しよう~

タイピングは漢字変換でどれくらい遅くなる?

タイピングゲームでの特訓成果を実践に生かすなら

タイピングゲーム → 和文コピー打鍵 → 作文

というように、和文コピー打鍵で漢字変換を鍛えるのが効果的です。

ですがタイピングゲームと作文の関係をこれまで考えておきながら

これらの橋渡しに相当する和文コピー打鍵の話をあまりしてきませんでした。

 

タイピングゲームでの経験が作文では大して役にたたないという知見だけでは

ライティング能力不足と漢字変換技術不足のそれぞれの影響が混じっていて、

どっちがどんくらいかがわかりません。

 

和文コピー打鍵ではライティング能力は関係ないので

漢字変換の影響だけが見れます。

これは単純な仮定をすれば定量化できそうなのでやってみましょう。

 

結論からいうと、タイピングゲームでの速度と和文コピー打鍵の速度の関係を見るために

漢字一字の変換操作・正誤判断・修正にどれほど時間かけるかという[漢字確定時間]を導入して整理し、

以下のグラフをつくりました。

f:id:menmentsu:20200607185626p:plain

このグラフはタイピングゲーム上の指の速度が、漢字変換によりどれくらい落とされるのかを表しています。

たとえば10打/秒も指が動く人 (青線) は漢字確定時間が0であればその通りの速度で文が打てますが、漢字を確定するのに時間をかけるにつれ実質的な打鍵速度がどんどん下がるのがわかります。1漢字に1秒かけるようだと平均では4~5打/秒の速度しか出てないことになります。


いくらタイピングはやくても漢字変換が遅かったらしょうがないというのは分かっていましたが、実際に数値化されるとイメージが膨らみますね。

 

漢字変換の特訓をしなかったらみんな同じところに収斂するなぁとか、

速くなればなるほど漢字変換でつまずいたときのダメージが大きいなぁとか、

漢字変換に1秒かけるとXCタイパーの速度は半分以下になるとか、

Zタイパー和文でも無双するには1漢字に0.2秒もかけてられないとか、

SSタイパーで0.5秒で漢字出せれば、1秒かけるXCタイパーと同等とか、

Aは漢字を0.5秒で出さないと1000字/10分に届かないから指の特訓の余地があるなぁとか。

 

 

作文速度の必要目安と思われる1000字/10分を楽に達成するにはタイプウェルでSSちょい上で漢字確定時間が1秒こえるのでこの辺でしょう。

Zタイパーならタイピング能力的に3000字/10分をゆうに超えるのに、何故これが人類にとって難しそうかというと赤い線を見ると明らかです。漢字変換を全て0.1秒以内に行わないといけません。2500字/10分だって0.2秒以内が必要です。ZタイパーがいてもZライターがいないのはこういう理由ですね。思考速度を持ち出す以前の問題でした。

 

補足ですが、漢字変換するにはスペースを押さなければならないからコストが0になることはありません。まとめて変換するようにすればスペースを限りなく0にできますが、一方で確認時間や修正コストやIME暴走リスクが増えるので、実際に変換をどれくらいまとめるのが合理的なのかはわかってません。

10打/秒の人が単漢字変換だけで使って、全部スペース1回ノールックでやるとすると漢字確定時間はスペース1打の秒数、すなわち0.1秒です。和文コピー打鍵コンテストの毎パソではこういう世界なのでしょうね。

でもそういう土俵でもない限り、意識しないと漢字変換に1秒かけることもざらにある気がする。漢字変換により思考や連接が途切れるコストもふまえると、漢字確定に人々は1秒くらいかけているというイメージでいいでしょう。

 

 

 

以下に計算過程を書いておきます。細かいところなので読み飛ばし推奨です。

 

まず漢字に関する情報が必要ですね。

でも私には諸々の知識がないので、とりあえず自分の文章を見てみました。

前の記事 https://menmentsu.hateblo.jp/entry/2020/05/31/193210

では漢字使用率29.15%、漢字ありで3925字、読みを仮名に戻すと4413字なので、

漢字あたりの仮名文字数の平均は2.34で、仮名文あたりの漢字率が25.9%がなりました。

  

キリが良いそれっぽい数字として

漢字あたりの読み仮名文字数は2.5

仮名文あたりの漢字率が25%

で考えます。

 

いまから、QWERTYタイピストが10打/秒で1000文字の和文コピー打鍵をします。

 

算数をはじめましょう。まず漢字使用率が30%なので漢字300字、仮名は700字です。

漢字あたりの仮名文字数を2.5としたので、漢字を仮名に戻すと

300漢字 × 2.5仮名/漢字 = 750仮名

となります。なので全部で

700仮名 + 750仮名 = 1450仮名

ですね。ローマ字入力では仮名あたりの打鍵数が約1.7ですので打鍵数は

1450仮名 × 1.7打/仮名 = 2465打

となります。これを10打/秒で打つとすれば

2465打 ÷ (10打/秒) = 247秒 = 4分7秒

となります。

これが1000文字を打つのにかかる理想的な時間です。速度をいつもの単位にすると2434字/10分となります。

 

ここでちょっと待ってください。漢字変換のコストを過小評価していますね。漢字変換には読みの漢字を打つコストだけではなく、変換操作をして正しいかどうか確認する動作が必要です。誤った漢字に変換されたら修正作業も必要です。

この漢字の変換操作・正誤判断・修正作業にかかる時間をまとめて漢字変換のコストと考えられないでしょうか。これを漢字確定時間と呼びましょう。

 

とりあえず漢字確定時間を漢字1字あたり1秒のケースを考えます。

いま考えてる例だと300字うつから、漢字変換に追加で300秒が必要です。

純粋なタイピング時間が247秒だったから、合計で547秒かかることになりますね。

漢字1字に1秒もかけてたらタイピング時間より漢字を考えてる時間のほうが長くなってしまいました。

ちなみに漢字変換込みの実質なタイピング速度は、

2465打 ÷ 547秒 = 4.51打/秒

となります。せっかくタイピングゲームで10打/秒まで特訓したのに、漢字変換に慣れてないと台無しですね。

 

というようにして、諸々の条件で同様に計算できるので、冒頭のグラフが得られます。

 

ちなみに作文向けの単位にすると

1000文字 ÷ 547秒 = 1097字/10分

となります。十分実用的な数値ですが、それでもタイピング能力自体は2434字/10分だったわけで、トップレベルのタイピング技術を持ってても作文の土俵では平準化されがちです。

 

 

結局ライティング速度は

タイピング技術×漢字変換技術×思考×下積み量

の掛け算で決まるのではないでしょうか(微妙にこれらは独立変数では無いっぽいですが)。

 

私のケースでは、軽い創作文 (下積み影響なし) ではどうも1700字/10分程度で頭打ちになります。

それをコピー打鍵すると2100字/10分あたりにいつも落ち着きます。思考によるロスが400字/10分に相当するのでしょう。

常用タイプウェル (JISかな換算280打鍵) は27秒で、まぁさすがにTW常用語だけでは作文できないから普段使う単語ではタイプウェル約35秒相当ということにします。これをベースに諸々の計算をすると2700字/10分となります。差分の600字/10分が漢字変換によるロスなわけですね。

和文速度をa、(タイピングゲーム等から予想される)理想速度をb、漢字使用率をcとすると漢字確定時間は

(1/a - 1/b) / c

で求まります。漢字を30%として単位に気をつけて計算すると、自分の漢字確定時間が0.21秒と求まりました。

私は単文節変換が主体ですがノールック漢字変換のために辞書を作り込んで拘っているので、スペースは多いけど判断時間が短いほうだと思います。ただ普段ずっと0.2秒で漢字を確定できているかというと、常にそこまで気合いは入れてないと思います。

 

 

もう少し数値遊びできそうですね。人々の漢字確定時間が実際どれくらいなのか知りたいので、打鍵動画漁って注視する。。?

 

まぁでもこの記事は3000字ですけど書くのに4時間はかかっているんで、125字/10分ですよ。和文コピー打鍵を鍛えれば効率向上するなんて作文素人にとっては空想上の話で、タイピングスキルの実用面での無力さを自分で実証してしまうのでした。