新かな配列練習道場

~単打最多の最凶かな配列を10本指で調教しよう~

QWERTY配列への諦観

みなさんのお手元のQWERTY配列、どう思いますか?

もしかしたら「どうしてキーボードの文字はこの並び順なんだろう」「わたしのキーボードの配列おかしくない?」ということを考えたことすらない人も多いのではないでしょうか。

それは、別に貴方の問題意識が低いわけではなく、QWERTY配列はそこそこ悪くない配列だから自然と受け入れてしまった、とも説明できます。

私はキーボード配列研究家としてQWERTY配列に代わる配列を考案することに対して、諦観のようなものを覚えるようになりました。

 

QWERTYに対して疑問を抱くのが配列屋の一歩です。歴史的な経緯は割愛しますが、QWERTYは一世紀半も前に英語タイプライター用に考案され、それを今我々は現代社会で、しかも日本語に対して使っているわけです。以上の事実からQWERTYが我々にとっての最適な配列ではないことは容易に予想できます。

具体的によくいわれる問題点として以下のようなものがあります。

①aを小指で打つのが辛い。

②tで人差し指伸ばすの辛い。

ホームポジションに頻出キーがない。

④交互打鍵が少ない。

たしかに、そもそもキーボードの運指をちゃんと守って打鍵する人は日常ではあまり見かけませんね。教科書通りのタイピングはQWERTY配列では万人向けではないかもしれません。

 

ただ (配列屋としては大変残念なことに)、上記のデメリットは練習により克服されうるものです。

①小指は鍛えればよい。というか厳密には小指を動かす必要はなく、小指は固定して手首で打てばよい。

②伸ばし続けるのが辛ければ、打つ瞬間だけ伸ばせばよいのです。ゆっくり打つから伸ばす時間が長く辛いのです。そのため、速く打てるようになりましょう。

③頻出の母音EIOが上段にありますが、中指・薬指を伸ばして打てるのでかえってホームポジション上より打ちやすいです。

④非交互打鍵は指の独立さえできれば大して苦労ではありません。

 

というように、配列屋が思うQWERTYのデメリットはアスリート的な努力により克服されうるものです。QWERTYに対する疑問点が揺らいでしまったら私のような配列屋は立場が危うくなりますが、この疑問が果たして一般の方々と共通の感覚なのかどうかは常に問い続けなければいけません。

 

実際、英語でも日本語でも最速のタイピストQWERTYを使っており、アスリートにとってはQWERTYのデメリットは関係ありません。逆に、交互打鍵は伸び代が少なく、それが多用されるDVORAK配列のほうがアスリートにとっては難しそうで、実際に最速タイピストDVORAKですらないのはそういう理由かと推測できます。

 

タイピストの大方は新配列に対して「俺は標準の配列でも十分速く打てるぞ?」とマウントをとるので (実際には眼中にすらない模様、日本のタイピスト養成の要となる毎パソではデファクト以外認められない、とかいろいろ)、まぁ仕方がないです。最高のタイピング技術を持っている事には敬意を払わねばいけません。また、新配列の武器である同時打鍵・交互打鍵といったものではタイピスト集団に太刀打ちできません。自転車の補助輪と言ったら言い過ぎなんですけど、それらは初心者受けはするものの超上級者にとっては逆に不要なものです。

 

というのも、実際私が配列屋になる前はタイパーであって、そういう軸も多少は理解できるのもあります。QWERTY嫌いの人も練習したりコツ掴めば打てるようになるんじゃないかと。私はQWERTYもJISかなも打てます。ただ、それは幼少からQWERTYに触れ、インターネット黎明期にメール・チャット・メッセンジャー等でふんだんにQWERTYを使った経験のおかげだろうとは思います。加えて私は吹奏楽経験者でもあり、小指・薬指を他の指並みに動かせるようになるよう膨大な訓練をしました。指は独立できるけど運動性はないタイプなのでQWERTYタイパーとしては弱い方だったので、JISかなに以降しました。7年くらい使いましたが、特に不便は感じなかったですね。配列の知識を得た今となっては驚きです。こんな私でもタイパーとしてはせいぜい中堅レベルなので、上位層はどれだけ凄い努力をしたか才能に恵まれてるかって話です。それはさておき、まぁ自分の指は客観的な事を言ったり万人向けの配列を作るには参考にならないですね。もし私が指をろくに動かしたことがなく、成人してからQWERTYを強制的に習わされたら、たしかにキレたかもしれません。

 

最近の若い人はスマホ世代なので、かえってキーボードを打てず、成人してからQWERTYというパターンはかえって増加しそうですね。キーボード文化がなくなってしまえばそれはそれである意味構いませんが、残念ながら (?) スマホタブレットフリック入力や音声入力はそこまで優秀ではないと考えていて、キーボード文化は衰退があるにせよあと50年は続くと勝手に考えています。そういったときに、特別な指の訓練をせずとも気軽に打てる配列があれば新配列の価値は今よりかえって高まるかもしれません。

 

まとめると、ほどよくキーボード文化が衰退してくれたほうが、キーボード操作技術を見直すきっかけとなり、配列開発の意義が高まりそうです。

現状ではやはりQWERTYが浸透しすぎていて、しかもプロタイピスト集団の後ろ盾もあり、いくら一般人にとって使いにくいものでも滅ぼすのは難しそうです。

 

逆に、QWERTYから例えばDVORAK等の同じアルファベット系列の配列に乗り換えるとQWERTYが使えなくなり、デファクトに満ちた日常で困るという弊害があります。なので、今できる最良の選択肢として、アルファベットはQWERTYで妥協して、日本語は別のかな配列を覚えて使う、という事をおすすめします。かな配列であればアルファベットと混じる事がなく、QWERTYと併用する事ができます。