新かな配列練習道場

~単打最多の最凶かな配列を10本指で調教しよう~

行段左右分離配列を表面的に比べる

DVORAK配列をはじめとする行段左右分離配列はQWERTYに代わるデファクトスタンダード配列候補として名高いです。

片方の手で行 (子音) を指定し、もう片方の手で段(母音)を指定する事から行段左右分離と呼ばれます。とてもシンプルな入力原理でわかりやすいです。

先日取り上げましたが、韓国のハングルキーボードは行段左右分離配列が標準となってます。QWERTY配列はちょっと難しすぎるので、より単純な配列が日本でも標準となるべきでしょう。

 

行段左右分離型は子音→母音を左右の手を交互に使うため、QWERTYとは異なり指先の器用な動作を求めないです。したがってタイピング初心者でも比較的とっつきやく、また一定のリズムで楽に打てるものと思います。

行段配列には英語も打てるアルファベット準拠のものと、英語を捨ててローマ字入力に特化したものがありますが、今回は前者のものを取り上げます。

行段分離配列はコンセプトが優秀なこともあって、かなり乱立しています。どれを使ったらよいのか分からず、初学者を困惑させているでしょう。覚えやすく交互打鍵が多いのはわかった、では他には各配列にどんな特徴があるのでしょうか。

 

もちろん全ての配列には長く使っていくことで初めてわかっていくような打ち心地があると思いますが、誰しもがそんな配列をぽんぽん変えていちいち吟味する時間はないです。

そこで、配列面を見ただけでわかる各配列の特徴をもとに表面的に評価して比べてみましょう。今までもKeyboard Layout Analyzerでの比較サイトはちょくちょく見かけてましたが、あの数値が本当に打ちやすさを反映しているのかは不明だし(中身が半ブラックボックス)、そもそも打ちやすさというのはその配列の便利さの一部でしかありません。

ここでは以下のようにもっと表面的に、直感的な比較を試みました。 

 

勝手ながら私がいくつかの項目ごとに5段階評価で数値付けしました。また、項目ごとに重要度を私の主観でパーセントで表し、それらの加重平均で総合評価のスコアを出しました。

各項目について、以下のようなことを根拠に評価してみました。

 

日本語うちやすさ (25%)

行段左右分離なのだから、基本的にどの配列も打ちやすいという前提です。ただし左右分離が徹底されてなかったり、人差し指の遠い領域にそこそこの頻度の文字があったり、高頻度の連接が同指連打ですと減点対象です。DvorakのKYが典型ですね。

 

英語うちやすさ (15%)

行段左右分離であっても、英語では子音同士が繋がることもままあり、交互打鍵がローマ字ほどには多くなりません。なので英語ではかなり配列の並び順を気をつけないと打ちやすくなりません。ここでは細かいことはさておき、設計者が英語も打てるように配慮したことを公言しているかどうかを重視しました。またそれ以外にも、例えばKはローマ字で頻出ですが英語ではレアなので、Kがホムポの場合は減点対象としました。

  

ショートカット互換性 (15%)

新配列への移行あるあるで、QWERTYとショートカットも変わってしまうから面倒というもの。たしかにショートカットは間違えると文字とは違ってBSでは済まないので、意外と移行の精神的コストが高いと思われます。実装時にショートカットだけQWERTYのままにしようと思っても、意外と設定が面倒です。

それならばQWERTYの主要ショートカットの文字は動かさないようにしようということで、多かれ少なかれ各々の配列で工夫されています。主要ショートカットが集まるZXCV辺りはローマ字ではあまり使わないので固定する、というのは典型的です。Eucalyn配列は特に凄いですね。QWERTYのほとんどのショートカットを生かしたまま行段左右分離を実現しています。

 

左右バランス (15%)

タイピングで片方の手ばっかり使うことになったら違和感はありませんか?これはかなり個人差があるところなのですが、できることなら右手・左手の使用率はほぼ同じであるのが望ましいです。本当は指バランスまで見たほうがいいかもしれませんが、ここではとりあえず左右のバランスだけを調べました (kouy様収集の100万字データをここでも使わせていただきました)。

 

小指節約 (10%)

小指の使用はかなり嫌われるようなので、できれば小指はあまり使わない配列が望ましいです。ただアルファベットがいかんせん多すぎて、またホームポジション重視だとどうしても小指にもそこそこのキーを置かざるをえません。という事情もあり小指節約を意識したアルファベット行段配列は少なく、取り上げた中ではHarmonixとQGMLWYくらいです。

  

子音が左側 (10%)

行段左右分離では子音と母音は左右どちらでも良いですが、望ましくは子音が左側、母音が右側が良いです。なぜならローマ字の表記は子音が左、母音が右であり、キーボード配列面もこれに対応しているほうが気持ちがいいからです。子音が左側だと配列面を眺めているだけでローマ字が浮かびあがるのが分かるでしょう。

ただ実際には子音が右側の配列が多いです。これはDvorak先輩がそうだったから単に受け継がれているというのもあるかもしれません。もう一つはショートカット互換性との相性です。多くの配列ではQWERTYのZXCV辺りは文字頻度が低いこともありそのまま保存します。母音は頻度が高いがキーは5つしかないので、左側母音とZXCV保存は左手が忙しくなりすぎるを防ぐので、相性が良いんですよね。右側母音だと空いてるキーにそこそこの子音が来てしまうので、右手頻度が突出します。

 

句読点・記号 (10%)

QWERTYでは句読点は最下段ですが母音IOが上段にあるため、句読点直前が段越えになりやすく打ちにくいとされます。これをいかにして解消しているかどうかが一つのポイントです。

もう一点はハイフンの位置であり、QWERTYではハイフンだけ最上段にあるのが不自然ですが、新配列ではハイフンを含めて設計されているかどうかもポイントになります。

 

 

Eucalyn配列系、Harmony配列系、Astarte配列は評価ポイントが高くなりました。これらは最近登場した配列の中では何となく有名であり、実際有用なんだろうなぁとは想像してましたが、ここでの数値でも裏付けられてより納得しました。

特にEucalyn配列には種々の派生があるようで、挙げきれてません。改の状態から英語の打ちやすさを多少考慮し、ハイフンもちゃんと考慮したら (子音は左側ですが) わりと最強感が出るように思えますね。

  

5段階評価にしましたが総合評価で4を超えるものはありませんでした。これは理論的な限界かと思われます。小指を節約したら必ずホムポ率は下がります。左側子音にしてショートカット互換性を意識すると必ず右手頻度が上がります。したがって配列に完璧を求めてはいけないので、自分が重視する要素、どうでもいい要素を把握したうえで配列を選びましょう。たとえば英語を打たない人はこれを軽視できますし、母音左側でも違和感なかったら別に構いませんし、ショートカット互換性はCtrl面だけQWERTYのままにできるから不要という人もいるでしょう。