ローマ字入力の習得にローマ字は不要
ローマ字入力はカナ入力です。
なぜならローマ字入力とはローマ字規則によりカナ文字を入力する手段だからです。
ちなみにフリック入力もカナ入力です。カナ入力の概念は人々の想定よりももう少し広いものです。
カナ入力の対としてふさわしいのはローマ字入力ではなく、漢字直接入力でしょう。
巷ではローマ字規則に従ってかな文字を入力することをローマ字入力と呼んでいます。断りなくカナ入力といったら、普通はかな文字が印字されている配列を使って打つことを連想しますよね。
ただしこれは便宜的な言葉の使い分けに過ぎず、カナ入力とローマ字入力が別物であるという誤解を与えています。
この手の議論は断片的にはたまに触れられます。
スマホ世代ではカナ入力がフリック入力と思っている人が多い。ソースはTwitter (だからカナ配列使用者の統計が取りにくくパソ活さんが嘆いていた)。フリック入力だけしかカナ入力を知らない人が多いということでしょう。
他方でローマ字入力のことを丁寧に「ローマ字かな入力」と言う人もいますね。紛らわしいわとも思ってしまいますが、むしろ正確な表現だと思います。
ローマ字入力がカナ入力であるならば、じゃあローマ字入力に使うQWERTY配列はカナ配列なのか?
答えはYESです。なぜならQWERTY配列は次のようにアルファベットを使わずに書けるからです。
カタカナ印字は五十音表での行を指定し、ひらがな印字は段指定または単打です。(「小」キーは次に入力されるかな文字を小書きにします。XCは基本的に使わないですね。)
このように五十音の行と段をそれぞれ指定することによりカナ文字を入力する為の配列を、配列界隈では一般に行段配列と呼びます。
これを見ますとQWERTY配列がいかに不規則な文字の並び順かがわかります。これをあまり気にする人がなぜかいないのは、ローマ字のせいで行段規則がごまかされているからかもしれません。
カナ配列としてQWERTYを説明すると、シフト方式は5つの後置シフト (あいうえお) であり、それらは五十音の段という意味づけがされているといえます。ナ連打で「ん」、他の行キー連打で「っ」というのだけは変則的でしょうか。
後置シフトならJISかな配列の濁点キーがそうですし、月見草配列ではゃゅょキーが後置シフトです。ただどうもQWERTYがかな入力という感じがしないのは、単打ではカナ文字が出ないキーが複数あるためかもしれません (とはいえ月配列の前置シフトキーも押しても何も出ませんね。。行段配列でも行指定のほうを前置シフトと言ったほうがいいのかもしれない。)。
フリック配列も立派に行段配列です。印字されている文字はあくまで五十音表で指定する行に過ぎません。段はフリック動作によって指定します。ただし文字の並び順が規則的で美しく、QWERTYより段違いに覚えやすいし馴染みやすいですね。
それでは他のキーボード配列では並び順が美しいのでしょうか?
ここではkouy様作成の「けいならべ」配列を紹介します。
ローマ字ベースの配列面が出回ってますが、これをカナ文字ベースに書き換えると次のようになります。
実に美しいです。
(ア) カサタナ ハマラ(ヤ)ワ の並びが右から左に綺麗に並んでます。またタダ サザ カガ ハバといった清濁の関係にある行が隣接してます。
行段左右分離がまさに徹底されていて、ここでの表記が左側がカタカナ、右側がひらがなに綺麗に分かれるのも美しいですね (やゆよ も実質的に段指定文字と考えます。例:サ+や→しゃ)。
QWERTYではクァ行やヴァ行といった滅多に使わない行にまでキーが割り当てられてましたが、けいならべでは外 (外来語) キーによって集約されていて、この辺も美しいですね。
もちろんこのような配列の合理性はけいならべの説明書に記載があるのですが、ローマ字印字のせいで配列面を眺めるだけだとなかなか気づけなくなってしまっていると思います。名前はよく聞くし拗音二打が良いんだろうな〜くらいの認識でしたが、使ってみて初めてkstnの並びの必然性に気づきました。
文字を規則的に並べるだけなら誰でもできるかもしれませんが、けいならべは実際の打ちやすさも抜群だから配列として美しいと考えられます。この辺はまた今度触れたいですね。
確かにローマ字は一度染み付いてしまえば便利であるし、同時にアルファベットも打てるようになるのは利点ではあります。私もなんだかんだ慣らされてしまったクチです。
それでも、ローマ字配列の正体は行段ベースのカナ配列であり、配列の習得自体にローマ字は不要です。日本語をアルファベットで入力するのが当たり前になっているのはなにかおかしいと思います。
今までローマ字配列だと言われていたものは「行段配列」であると言い直しましょう。