連続シフト方式の二面性
連続シフト方式は楽さは売りですが、配列界では"遅い"とされます。
これは連続シフト方式といいつつ連続的にシフトが成立するケースが少なく、実質的に「断続シフト」が主となってしまっているせいです。
新JISの連続シフト方式が使いにくかったから配列界で中指シフトを代表とする前置シフト方式が編み出されました。新JISとは反対に親指シフトNICOLAが生き残ったのは同時シフト方式には連続シフト方式のような煩わしさがなかったからと思われます。
でも高速タイパーお墨付きのQWERTYやJISかなは連続シフト方式の配列です。
そこでは連続シフトは"速い"のです。これはどういうことなのでしょう。
JISかなは単打が多いから連続シフトの影響が注目されなくても仕方ないのですが、
QWERTYではそうは言ってられません。ローマ字ではなく英語の話です。
英語圏では大文字を使いまくるため、どっぷり連続シフト方式です。
そして英語タイパーはめちゃくちゃ速い人が多いです。
トップに君臨するのはSean Wronaですよね。 タイプレーサーの記録を覗くと
https://data.typeracer.com/pit/profile?user=arenasnow
速さが200wpm = 1000字/分越えです。驚くことに、これは平均の速度です。
タイプレーサーは2分以内の実用コピー打鍵の土俵ですが、タイプウェルよりは長いです。
最高記録は271wpmらしい。やばい。打鍵速度はローマ字のトップタイパーより上です。ローマ字にはシフトがないにもかかわらずです。
英語ではロールオーバーしやすく、シフトのデメリットがあっても理論的なトップスピードでローマ字を凌駕するのでしょうね。
説明が後になりましたが、シフトを押している間だけシフト面が有効になるシフト方式を"連続シフト方式"といいます。
(前置兼連続シフト、同時兼連続シフトというのもあります。)
その名のとおり押している限りは"連続で"シフトかかるわけですが、
実際には常に連続的にシフトを使っているわけではありません。これが混乱のもととなっています。
たとえば「QWERTY」という単語でシフトを6回押す人はいないでしょう。大文字英語は連続シフトの代表例ですね。
でも「U.S.A.」はどうですか?ピリオドもちゃんと打ってください。めっちゃくちゃ打ちにくいと感じたのではないでしょうか。
「Please」とかはどうでしょう。これは意外と打ちやすいですね。
小書き連続シフトのJISかなではどうかというと、
「しゅみ」はめちゃくちゃ打ちやすいですね。
「しょう」はやや打ちにくい。シフト離すのが少しでも遅れると「しょぅ」になってしまう。
「いぇい」はめっちゃ打ちにくいです。これはJISかなタイパーから忌み嫌われている言葉です。
(ちなみに私がいろは坂配列で小書き別置仕様にしたのは「いぇい」のせいです)
連続シフト方式が煩わしいと感じるのは、文字の前後でシフトをタイミングよく押したり、離さなくてはいけないときです。
あるシフト文字の前後でシフトキーを離す必要があるかどうかについて、連続シフト方式におけるシフトを以下のように三種類に分けて考えることを提案します。
①連続シフト :シフト文字前後でシフトを押しっぱなしでもよい
②半連続シフト:シフト文字前後どちらかはシフトを離さなくてはいけない
③断続シフト :シフト文字前後両方でシフトを離さなくてはいけない
そして、連続シフト方式といわれる配列が、実際にどのシフトに頼っているかというと
JISかな → 連続シフト
英語QWERTY → 半連続シフト
新JIS → 断続シフト
ということになります。
雑ですがTypelighterで実験しました。
連続シフトのABC、半連続シフトのAbc、断続シフトのaBcを自然な速度で打ってみたところ、
速度比はだいたい14:9:7になりました。
「シフトのタイミングに気をつける」事がざっくり1打分の重みがあると考えていて(低速域ならもっと軽く、高速域ならもっと重い)、
そう考えるとABCは3打、Abcは4打、aBcは5打の重みがあるので速度は5:4:3、すなわち11.7:9.3:7になりそうですね。
実測値と比べると、連続シフトについてはじゃらっと打ってしまったので速く出ているとして、だいたい傾向はみれているでしょうか。
JISかな、英語QWERTYではタイパーレベルの速度を出す人がたくさんいるので、半連続シフトまでは高速タイピング可能であるが、断続シフトは全然無理ということが想像できます。
断続シフトが打ちにくいから新JISは受け入れられなかったのでしょう。
新JISは実は良い物だったという説もありますが、そもそも新JISを使っている人が全然いませんし、
今日時点で打鍵動画がいっさい見当たりません。
タイパーレベルの打鍵なんていらないんだから速度はどうでもいいという軸もありますが、
多分新JISでは800字/10分程度が限界な気がします (大岡さんが仰っていたか)。
800字/10分はとりあえず十分な気もしますが、1.3字/秒はやっぱ遅いし随所で不便しそうです。
もちろん断続シフト以外にも問題はいろいろとあるから、あのコンセプトの中で配列を自分用に最適化すればもう少しいけそうではあるけれども。。
連続シフトというとシフト文字の連続についてカウントしがちですが、
どうもシフトを頻度低い文字を当ててかつ連続させるというのは日本語的に相当難しいっぽいです。
それより強調したいのは「シフト押しても押さなくとも変わらない文字」の存在ですね。
JISかなは単打が主体の配列でありますが、連続シフトも実は強力です。
単打が主体だからこそ、シフト押しても押さなくとも変わらない文字が多く、連続シフトや半連続シフトが成立しやすいわけですね。
断続シフトは「いぇい」「つっよ」くらいしかほんとに思いつきません (まだあると思いますが)。
また、小書きの「ょ」「っ」という頻度が高いものまでシフト面に行っているからたまに批判対象となりますが、
でも連続シフトのコンセプトをはっきりさせているからこそ連続シフトの可否が判断しやすいです。初見の文でも連続シフトを活用できることでしょう。
促音・拗音が連続する場面はたくさんあるので、たとえば
ちょっと、ちゃくちゃく、しゅしゃせんたく、ちゅっぱちゃっぷす
良い例が思いつきませんが、無限にあります。カタカナ語なんてとりあえずシフト押しっぱなしでいいやという感覚です。
でも小書きシフトとして統一してしまったがために「~ょう」が半連続シフトになっているので、もったいないですね。JISかなを使っていても気を遣うポイントとなっています。
英語QWERTYではアルファベットには全て大文字がありますが、スペースがシフトの有無で影響受けないことが肝です。
なぜなら大文字は単語の頭、すなわちスペース直後にあることが多く、単語の内部には滅多にこないからです。
英文の大文字は文頭にくるものがほとんどですが、これはほぼ必ず半連続シフトとなるわけです。
英語で連続シフトというと「QWERTY」のように大文字ばかりの単語が印象的ですが、
実はもっとよく登場する「I」も前後がスペースなため連続シフトです。
連続シフトを採用している新配列が薙刀式ですが、連続シフトは6%だそうです。
でもたぶん、そこでの連続シフトはシフト文字の連続のカウントであって、
私が話題にしている連続シフトでは前後がシフト文字でなくともシフト押してもOKならカウントするわけで、
そういう連続シフトまでカウントしたら6%より全然上がりそうですね。薙刀式以外の新配列なら連続シフト面がびっしりだから関係なさそうですが。
話をややこしくしてしまったかもしれない。。
大岡さんから刺激され気づいたことは断続シフトが相当数あっても、相互的に考えて連続シフト方式は創作文と相性が良いということで、
たしかに対立する前置シフト・後置シフトはトップスピードは高いが思考を邪魔する気がするのは私にもわかってきました。
作家といえば親指シフト = 同時打鍵という印象でしたが、ふつうの連続シフト方式も全然アリなのでしょうね。
創作文ではコピー打鍵と違って打鍵を変に圧縮することもないから、断続シフトであってもシフトのタイミングにそこまで気をつける必要はないと思われます。
新JISのマイナーチェンジで断続シフトを減らして高速打鍵を可能にするには、
①キー数増やす
②シフト方式を増やす
のどちらかしかないでしょう。
①はホムポ一列ずらしでJISキーボードの3段をフルで使えば、左小指も2列になるけど可能です。タイパー向けならよさそう。
②は ぁぃぅぇぉ だけでも小指シフトに逃がせばシフトを押しても変わらない文字が増え、よさそう。小書き同置化も一気にやりやすくなります。
①②両方実行したら月配列並みの速度になったりしそうですね。
実は今日、そのような配列を作り始めようか一日中迷っていましたが、
まぁ結局いろは坂配列が自分にとって良い配列だよなぁなんてこの記事を書きながら思いつつ、
でも気が向いたら着工するかもしれない。。