薙刀式の親指シフト化に挑戦
いつも取り上げてくださり感謝の極み。
キー配列を特徴づけるのは大きくわけて文字の並びとシフト機構の2つである。
文字領域が作文に最適化された配列は薙刀式しかない。
プロの作家さんだからこそ作成できた配列であり、なかなか真似できるものではない。
一方で、カナ配列のシフト機構については好みが分かれるところで、
できれば自分好みのシフト機構で薙刀式を使ってみたい。それは必ずしもセンターシフトではない。
ではなんでもかんでもシフト機構を自在に変えられるかというと全くそうではなく、
たとえばセンターシフトの中指シフト化は大岡さんが仰るように難しい。
中段中指の単打を犠牲にするから文字配列が大きく変わるということももちろんで、
また中指シフトはたしかに花配列までは楽さを目的としていたかもしれないが、月配列の時点でもうターゲットが高速打鍵に絞られていたのではないだろうか。
なので中指シフトは短距離向けであり創作文が意図されているわけではなく、評価しているのはコピー打鍵速度に興味があるタイパー側の方々が多いと思っている。実際に月配列の株を上げているのはZタイパーの存在だ。
一方でセンターシフトと両親指同時シフトは速さより楽さを目的としていて、両方ライティング目的だと思う。実際に両方ともプロの作家の方々から定評があるし、逆にタイパー側からは人気がないというのも共通である。
センターシフトが他にどんなシフトに頼っているかにもよるのだが、基本的に文字領域の配列をほとんどそのままでシフト機構を変えられるので、互換性がある。
薙刀式はセンターシフトで親指のシフトがメインで、また濁音については同時押しかつ同置なので、この2つのシフトを活用すれば親指シフト化しやすいのは明らかだ。
一方で小書きと拗音はかなり影響を受けそうで、また親指シフトは親指にしかシフトがないからシンプルで良いこともあり、うまく移植できるのかやってみないと分からない。
本家の薙刀式
というわけで、勝手ながら薙刀式の親指シフト化に挑戦しました。
配列図完全版
配列図簡略版
結論からいうと拗音同時押しと「ぱ」「ぷ」「ぇ」の同置は犠牲になったけれど、小書きは逆手シフト、半濁音は同手シフトで出す事にしたら意外ときれいにまとまり、実用的には問題ないレベルになったと思う。
薙刀式は過去のバージョンも参考にしました (V8~)。特にV10からの影響が強いです。親指シフト化にあたり濁音と小書きを両方逆手シフトにしようと思ったので「へ」&「ゆ」や「た」&「お」が同キーの最新版の仕様は断念せざるをえませんでした。
「す」「え」の仕様は受け入れ、小書きは「ぇ」だけ左上に行っている。
半濁音がおおよそ同置にできたのは奇跡である。もともと薙刀式は「ひ」「へ」「ほ」というハ行のマイナー清音が単打であり、しかも「ほ」はシフト面の定義がなく「ひ」も過去のバージョンではそうだったから、半濁音同置がやりやすかった。3段カナ配列でこの辺が単打のものはほぼ無いんじゃないだろうか。「ぱ」「ぷ」の同置は断念したが2つで済んだからこそカーソルキーの裏に潜めることができたわけで、半濁音用に別のシフトを用意することが避けられたのは大きい。
「う」「ぅ」「ゔ」が同置の最新版は美しいが、ここでは小書きと濁音を同じシフトにしてしまったのでQが「ゔ」だった以前の版を参考にした。
拗音は1動作ではなくなったし、「ゃ」「ゅ」「ょ」も単打ではなくシフト面なので、だいぶ打ちにくくなってしまっただろう。でもそれはNICOLAも同じなので元祖親指シフトより悪いということはない。また拗音は漢語やカタカナ語といった話題語に使われる事が多く、繋ぎのことばで頻出なのは「しょ」「ちょ」「じゃ」くらいと思っているから、拗音が速く打てなくなってもダメージは少ないと思っている。
親指シフト化にあたり、明らかに薙刀式の仕様を逸脱して恣意的に位置を変えられた文字を明示すると以下のとおり。
ふつうの清音で動いたのは「め」だけである。影響が少ないことを祈る。。
もちろん親指シフト用に最適化すれば小書き・半濁音の完全同置はできるのかもしれないし、また小書きを同手シフトにすれば「う」「ぅ」「ゔ」の同置等もできるかもしれないしで、改良の余地はある。
濁音と小書きを同じシフトにしたからそこでは制約が増えているけれど、本家の拗音両手同時押しのルールは無くなったので、配列検討で文字を動かせる条件は変わっていると思う。
でも例えば「は」のシフト面を「ぱ」にして「を」をどこかに移そうと思っても、とても難しそうで素人にはできないし、大工事になったら薙刀式のコンセプトから外れるので本末転倒である。
あと連続シフトはさすがにONのほうが良いと思われる。
NICOLAではOFFだけれど、薙刀式は連続シフトの積極活用も前提としていると思うから、OFFだとかなり使用感が変わってしまいそうだ。
センターシフトを2つのシフトに分離したから連続シフトの成立条件はより厳しくなったが、もともと同手シフトの交互打鍵はそこまで苦ではないので、片手の運指だけでも連続シフトで楽になれれば十分ともみれる。片手アルペジオで快適に打てる連続シフトは多いはず。
連続シフトが成立する連接は微妙に変わっていて、清音メインの同手シフトと濁音メインの逆手シフトがごちゃごちゃになっているためトリッキーかもしれない。たとえば「ので」が連続シフトで打てる。でも本家では濁音は同時押しだがシフト押しながらでも例外なく打てていたので、それも連続シフトとみなせばやはり親指シフト化により連続シフトの成立条件は厳しくなったということになる。
拗音同時押しができなくなっていたり、シフト面の清音が同手シフト強制となった事などから明らかなように、本家の薙刀式からは性能は落ちているだろう。
もしこれに慣れたら本家がさらに気になるようになり、やっぱりセンターシフトが正解だったというような結論になるのかもしれない。
でもとりあえず、薙刀式に限りなく近い文字配列を親指シフトで体験できるようになり、
ちょっと使ってみているがかなり印象がいい。人差し指と中指で文章を作るとはこういうことだったのか。。
特に、日本語の骨格となるカナとそうでないカナや、大岡さんが仰る繋ぎのことばと話題語の違いについて予備知識があると、薙刀式の良さがよくわかる。
(以前、薙刀式を試用した時は骨格となるカナに関して知識が無かったし、またセンターシフトや同時押しの練習にとらわれて文字配列の良さの認識まではたどり着けなかった)
ふつうに創作文ができる程度まで速くなったらまたレビューしたいと思います。
いろは坂配列はタイピングゲーム向けということにして、日常は薙刀式親指シフトバージョンで出来ないかなどと考えている。かえうちで実装できるようになったからリアフォの民として個人的にすごく気軽に使えるようになった (自作キーボードの知識が無いだけ)。
かな配列を複数マスターするのはかなり難しいとされるが、薙刀式といろは坂配列は何もかもコンセプトが逆なので脳内でごっちゃにならず共存できるのではなどと期待。
いずれにしてもライティングに最適化された配列は素人には設計が無理だし、計算配列に落とし込むのも微妙だろうから、その点でプロのライターである大岡さんがデザインした薙刀式の文字配置はたいへん貴重である。
親指シフトでも別の作家さんが配列設計に勤しめばまた話は変わるかもしれないけど、それはいつになるか分からない。
上記のように薙刀式は親指シフト化されたとしても作文において強力な性能を持ち続けていると思うし、大岡さんが編み出した文字配置は薙刀式の枠を超えた価値があると思う。