【続き】作家とタイパーの壁を数値で可視化する
前記事はこちらです。
この記事が大岡さんに紹介されました。光栄です。
記事を拝見しましたが、書きながらでないと到達できない思考の境地がある、ということが最も重要なのでしょう。
モデルの正当性うんぬんについては深入りされなかった認識ですが、私の前記事の執筆モデルは単純な割には意外と適用範囲が広くて便利そうです。したがって大岡さんコメントを踏まえて拡張できないかと考えている次第です。この記事は少しマニア向けで、まずは前記事をご覧ください。。
書く前に思い描いている文章量Pは、執筆中の思考速度の底上げ量として反映できるはず。
もう一点「書きながらではないと思いつかない文がある」という事は、書きながらの思考の質が100%を超えるものとして扱えそうです 。こちらをもう少し考えていきましょう。
前記事に加筆しましたが、文章量をc、入力速度(コピー的打鍵)をw、思考速度をt、タイピングしながらの思考の質をeとすると、総執筆時間は
ただし"ながら思考"速度が入力速度より大きいte>wの時は上の式は使えず、総執筆時間は入力時間と等しいc/wとなります。
さて、前記事で執筆時間を結果として求めてしまったので、タイパー的打鍵速度と作家的執筆速度の関係がわかりにくくなってしまいました。ここではコピー打鍵速度→創作文執筆速度の変換を試みます。
まず上の式で総執筆時間をTと置きましょう。すると創作文執筆速度は
となります。ただしte>wの時ではc/T=wで、タイパー的打鍵速度と同じです。
ということで、この式からタイパー的打鍵速度と創作文執筆速度の関係が分かるわけです。前記事のように手を止めている時の思考速度を1000文字/10分と仮定すると、次のようになります。
今回はタイピング中のほうがむしろ思考の密度が濃くなる100%以上の領域も計算しました。
これ、実はすごく興味深いんですね。赤い数値に着目してください。これはあるタイピング中の思考の質における、執筆速度が最大となるタイパー的入力速度です。
タイピング中のほうがむしろ文が色々と思い付くケースでは、タイピング速度をあえて落とし、手を動かしている時間を長くしたほうが執筆が速くなります。というか右側領域の赤い数値では指の理論速度で執筆できています。いかに手を止めることが効率悪いことなのかがわかります。
大岡さんの書きながらの思考時間を大事にするというスタイルから、速度を落とすorタイパー的打鍵は設計外の配列で書き続けたほうが結果的に速く書けるのでは?というのはなんとなく予想してましたが、myモデル的にもこの傾向が見れてよかったです。
タイピング中の思考の質 = 100%を境目にそれ以下ではタイパー正義なのに対し、それ以上では速度重視ではなくその人の思考に則したタイピングスタイルの作家正義、といえそうです。きれいに壁を見れる事は想定してなかったので、ここに数値計算の面白さがありますね。
傾向として筆記用具によって文体が変わらない派が前者、変わる派が後者になりそうです (私は後者ですが)。
単純なモデルで色々と説明することを美徳としているので、複雑なモデルにしてまで実際の執筆活動を数値化しなくて良いと思ってます。とはいえ、このモデルの延長線上で他の事柄も説明できそうだったらまたこの話題に言及するかもしれません。